大崎上島との出会い
- Ellie Taniguchi

- 8月10日
- 読了時間: 2分

大崎上島と初めて出会ったのは、約12年前のことでした。
ふとしたきっかけで訪れたその島は、瀬戸内海に浮かび、船でしか辿り着けない特別な場所。
静かな海、ゆるやかな時間、そして人のあたたかさが、初めての旅の印象として深く残りました。
その後も何度か訪れるうちに、島でのつながりが少しずつ広がっていきました。
友人が増え、海沿いの景色や集落のたたずまいに惹かれ、次第に「また帰りたい」と思うようになったのです。
数年前からは、東京との二拠点生活を送るようになりました。
都会のスピード感の中で働きながらも、この島に来ると、呼吸が深くなり、肩の力が自然と抜けていく感覚がありました。ここでは、時間そのものが持つ質が、まるで別物のように感じられたのです。
ちょうどその頃、私の人生は大きなライフステージの変化を迎えようとしていました。
起業家としてキャリアを積み重ねる中で、どこか満たされない思いを抱えていたのです。
富や名声を追いかけるのではなく、本当に心から望む世界の中で生きたい──そんな思いが、少しずつ形を帯び始めていました。
そもそも私が起業家として生きてきたのは、自分の内側にある世界を外の世界に表現したかったから。私にとって起業は、何よりも創造的な営みでした。
しかし、資本主義社会の中で、お金という記号に振り回され、その裏で繋がっている本質的で実態のあるものを、しばしば見失ってしまっていたことに気づいたのです。
頭で考える、目に見える世界だけではなく、心で感じる「見えないけれど確かにあるもの」をしっかり見つめたい。声なきものの声に耳を澄ませたい──。
そうした思いが重なり、リトリートセンターをつくりたいという願いへとつながっていきました。
そして不思議なことに、この島が世界的なリトリートの里になる、という直感も同時に芽生えていたのです。
やがて、この島にリトリート・センターを開き、日々訪れる方々を迎えるようになりました。大崎上島は、多くの移住者や旅人を受け入れてきた土地です。誰かにとっては新しい暮らしの始まりであり、また別の誰かにとっては次の旅への通過点。そのどちらも、この島は静かに受け止めてくれます。
私にとって大崎上島は、「ただの旅先」から「人生の拠点」へと変わった場所。
ここで生まれる出会いと時間が、訪れる人の心に静かな変化をもたらすことを願いながら、この島と共に歩んでいます。



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