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蒼庵(そうあん)

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私がこの島でリトリートの拠点としているのは、歴史ある一軒のお屋敷です。

かつては望月さんという方が建てたもので、平家の落武者が拓いたと伝わる「海からは見えない」小さな集落の真ん中にあります。

石垣と塀に囲まれたその姿は、まるで小さな城のようで、かつては「殿屋(とのや)」という屋号で呼ばれていたそうです。


その後、長く住まわれていたのは、この集落に代々暮らし、多くの土地を所有していた惠良さんという方でした。

私が初めてこの家をリトリートの拠点に選んだ時は、その歴史を尊重し、「惠良邸」と呼んでいました。


けれども、東京との二拠点生活を終え、この島に本格的に移り住むことを決めたとき、ある友人がこう言ったのです。

「これからは、エリーさんのエネルギーをもっと体現するような名前をつけたほうがいいと思う。」

その一言がきっかけで、この場所に新しい名前を贈ることにしました。


その名は──「蒼庵(そうあん)」です。


「蒼」は、ただの青ではありません。

空のかなた、海の深淵、森の奥に潜むような、静けさと奥行きを湛えた色。

どこか時間を超えて、古層の記憶に触れるような響きを持っています。

このリトリートが目指すのも、まさにそうした“深い静けさ”に身を置く体験です。

無理に何かを変えるのではなく、ただ呼吸を深め、言葉になる前の声に耳を澄ませる──

そうして、自分の内側から自然に立ち上がってくる感覚や気づきに出会ってほしいのです。


「庵」には、小さくても深く、私的でありながら開かれた場所、という意味を込めました。

ここでは、大きなことを語る必要も、正しい答えを出す必要もありません。

ただ、その人らしく“在る”ことの豊かさを味わえる場所であってほしいと思っています。


この島には、古くから旅人を受け入れてきた文化があります。

遣唐使の時代から瀬戸内の海は「海の道」として、多くの人と物が行き交いました。

だからこそ、ここには目には見えない懐の広さと、通り過ぎる人を否定しない包容力が息づいています。


「蒼庵」は、この島の中では小さな場所です。

けれども、訪れる人が自分の本質と再び出会うきっかけとなるように──

そんな願いを込めて、日々この場を整えています。

 
 
 

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